英語の不定詞を扱った連載の「『その試合を見るのに良い席を取りたかった』!」の回で、次のように書きました。
蛇足ですが、視点を変えて日本語の「ことばのしくみ」を考
えるとすれば、この日本語文の『その試合を見るのに』も興
味深い要素です。それについて調べてみると、英語の不定詞
のしくみを理解することにも役立つ視点が得られます。この
ことについては、別の機会に譲ることにしたいと思います。
そこで、今度はこの『その試合を見るのに』に使われるような動詞
的な要素に後続する『に』という表現を扱ってみたいと思います。
代表的な表現には、『(~する)のに』、『(~する)ために』、『(~す
る)ことに』、『(~し)に』などがあります。
先ず、英語の不定詞を扱った際の日本語訳と深く関わる『(~する)
のに』、『(~する)ために』から考えてみましょう。
(1) その試合を見るのに良い席を取りたかった。
(2) その試合を見るために良い席を取りたかった。
They wanted to get good seats to watch the game.のto不定詞が
そうであったように、人によっては(母語話者でも)(1)の『その
試合を見るのに』は『席』を主要部とする名詞句内の修飾語と分析
するかもしれません。その場合、直接的にはこの句が『良い』を修
飾することになります。一見、これは妥当そうに感じられるかもし
れませんが、果たしてそうでしょうか。
そのような分析では、『その試合を見るのに良い席』がひとまとま
りの名詞句をなすことになりますので、『別の試合を見るのに良い
席』や『その試合を見るのに良くない席』などの句と対立をなす文
脈が想定されるはずです。この点に照らして(1)の意味を再考して
みて下さい。そのような文脈は通常想定されないのではないでしょ
うか。
2009年12月1日火曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿