(1)の『その試合を見るのに良い席を取りたかった。』が通常用いら
れる文脈では、『その試合を見るのに』が『良い』ではなく、『取り
たかった』を修飾する副詞句であることが分かります。この点は、
They wanted to get good seats to watch the game.の場合のto不
定詞と存外似ていないでしょうか。
(2)の『その試合を見るために良い席を取りたかった。』では、『そ
の試合を見るために』が副詞句として解釈される度合いが一層増し
て、『その試合を見るために良い席』を一つの名詞句とみなす分析
は、より困難になるようです。その証拠に、『別の試合を見るため
に良い席』との対比は難しく、対立する句として想定される『その
試合を見るために良くない席』自体がやや不自然ですらあります。
このように、(1)、(2)のような文で用いられた『その試合を見るの
に』、『その試合を見るために』は、『席』の名詞修飾句をなすので
はなく、主節の動詞修飾句として機能しているわけです。厄介なの
は、『その試合を見るのに良い席』や『その試合を見るために良い
席』が程度の差こそあれ、それ自体は文法的で、意味解釈にも大き
な困難を来たさないために、それらをうっかり一つの名詞句として
分析し、『その試合を見るのに』、『その試合を見るために』を『席』
の修飾句を構成する一部だと誤認してしまう可能性があることで
す。これは、母語話者にも起り得ることで、上述したように対比的
な別の句を想定するなどして検証してみなければ、分かりにくい性
質のものであることは確かです。
2009年12月1日火曜日
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