『病気にかこつけて休む』のような言い方で用いられる『かこつける』という動詞の意味について考えてみたいと思います。この動詞が「~のせいにする」くらいの意味で用いられていることは、多くの人が理解出来るかもしれません。けれども、この言葉は漢字で『託つ』と書かれること、古典語では『かこつく』もしくは『かこつ』という表現に相当することは、現在の日本語話者に広く知られたことではないかもしれません。私もこれまで読んだ文章の中で出くわし、辞書を引くなどして、いつしかこれらの事実を知るようになったのでした。それでも、そこに何ら疑問や興味を持つことなく暮らしておりました。
ところが、今年の春先だったでしょうか、奈良時代およびそれ以前の日本語に見られる母音の甲乙の区別について考え直してみたくなり、あれこれ調べながら源氏物語をいくらか読み直す中で、そういえば『かこつ』という表現は「不満に思って、文句を言う」の意味で用いられることが割と多かったなと感じたことがきっかけで、現代語の『かこつける』との関係に注意が向きました。はて、どうして「不満に思って、文句を言う」という意味の『かこつ』が「~のせいにする」意味になってしまったんだろう。また、『かこつ』の発音が『かこつける』と変ってしまっているのは何故だろう。そんなことをふと考え始めたのでした。
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