既に例示したように、good milk to make good cheeseは、一つ
の名詞句としては用いられないようです。これは、「ことばのし
くみ」から説明することが出来ます。不定詞が名詞修飾となるため
には、いくつかの条件を満たす必要があります。そのうちで、もっ
ともはっきりとしているのは、不定詞に修飾される名詞(「主要部
名詞」と呼ばれます)が不定詞となっている動詞句の意味上の主語
や目的語(「項」と呼ばれます)となることです。次の例は、この
条件を満たしていますから、それぞれ不定詞はsomeone、no one、
somethingを修飾するものとして解釈することが出来ます。
(1) someone to help you
(2) no one to help you
(3) something to drink
(4) something to drink milk from
(1’) Someone helps you.「誰かが君を助けてくれる」、そんな「誰か」
(2’) No one helps you.「誰かが君を助けてくれる」、そんな「誰か」はいない
(3’) (One) drinks something.「(人が)何かを飲む」、そんな「何か」
(4’) (One) drinks milk from something.「(人が)牛乳を何かで飲む」、そんな「何か」
この条件に照らすと、good milk to make good cheeseで、to make
good cheeseがgood milkを修飾するためには、
Good milk makes good cheese.「良い牛乳が良いチーズを作る」、そんな「牛乳」
という関係が成り立たねばなりません。『良い土が良い野菜を作る』
のような表現が日本語にもあるように、「良い牛乳が良いチーズを
作る」という表現も十分に可能でしょう。けれでも、あくまでも人
がチーズを作ることが前提となっている文脈で、そのために使われ
る牛乳という意味を意図しているとすれば、「良い牛乳が良いチー
ズを作る」という内容とは食い違うものとなります。そのため、good
milk to make good cheeseは、「良いチーズを作るための良い牛乳」
を意味する一つの名詞句とはならないのです。
もし、力任せに一つの名詞句として解釈しようとすれば、「良い牛
乳が良いチーズを作る」、そんな「牛乳」ということから、「良い
チーズを作ってくれる良い牛乳」といったところでしょうか。依然
として不自然さが残るではないでしょうか。
「ことばのしくみ」に従って、「良いチーズを作るための良い牛乳」
と表現しようとすれば、差し詰めgood milk to make good cheese
fromとなるでしょう。ところが、この表現をdouble quotesで括
って検索しても、例は見付かりません。つまり、そのように不定詞
を用いて名詞を修飾することで「良いチーズを作るための良い牛
乳」という特定の牛乳を一つの名詞句で表現すること自体が日常的
にはなされないと考えられます。次のように、「良いチーズを作る
には良い牛乳が必要である」ということを導入してから、such milk
のような表現を用いて、そのようないわば特定の牛乳を指すことが
出来るからです。
We need good milk to make good cheese. Such milk is....
The good milk that we need to make good cheese is...が英語とし
ては堅苦しく、日常的な表現として不自然であるのと同様に、
The good milk to make good cheese from is...は、やはり堅苦しく、
不自然に響くはずです。
2009年11月18日水曜日
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